AIに「使いやすい会計ソフトは?」「確定申告まで対応できるソフトは?」「銀行明細を自動で取り込める会計ソフトは?」と質問したとき、どの製品が回答に登場し、AIはどのWebサイトを情報源としているのでしょうか。

Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査では、会計ソフト業界に関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、回答本文で言及された製品・企業・サービスと、参照元として記録されたWebページを分析しました。

調査では、freee会計が68回答、マネーフォワード クラウド会計が52回答に登場する一方、参照元は466ドメインへ広がっていました。回答本文で目立つ製品と、Geminiが情報源として使うサイトは、同じ構造ではありません。

調査概要

項目

内容

調査主体

Queue株式会社/LLMOナビ

調査目的

会計ソフト業界におけるAI検索上の企業・製品・サービスの可視性把握

対象

会計ソフトや導入支援先を探すユーザーを想定した質問

対象AI

Gemini

調査設計上の質問数

100問

取得回答数

100回答

非指名と確認できた質問数

100問

調査年月

2026年9月

地域

JP

検索発火

94回答

事前学習

6回答

確認できない条件

Geminiの具体的モデル名、アプリ/APIの別、正確な実行日時、詳細な検索設定、会話履歴等

「非指名質問」とは、freeeや弥生など特定の製品名を質問文にあらかじめ指定せず、「簿記に詳しくなくても入力しやすい会計ソフトは?」「銀行口座の明細を取り込める会計ソフトは?」など、目的や条件から候補を尋ねる質問です。

なお、本調査はGemini回答内での可視性を調べたものであり、会計ソフトの市場シェア、製品品質、利用者満足度を評価したランキングではありません。

本記事で使う「参照元・本文言及・推薦」の読み方

AI検索上の露出は、少なくとも三つに分けて見る必要があります。

参照元は、Geminiが回答生成時の情報源として記録したWebページやドメインです。

本文言及は、回答本文に会計ソフト、企業、サービス名などが1回以上登場した状態です。参照元一覧にURLがあるだけの場合は本文言及に含めません。

推薦は、その製品やサービスが利用・導入・相談などの候補として本文で提示された状態です。

また、本記事でいう出現回答率は、100回答のうち対象が少なくとも1回登場した回答の割合です。

今回のレポートでは100回答を同じ基準で推薦分類していないため、「名前が出た製品=おすすめされた製品」とは扱いません。

調査結果の全体像|100回答中94回答で検索が使われた

Queue株式会社のLLMOナビによる9月調査では、100回答のうち94回答で検索発火が記録され、6回答は事前学習による回答でした。

検索が発火した94回答では、Geminiの回答生成時に使用されたものとして421件の検索クエリが記録されています。検索発火回答あたり平均4.48件、中央値4件です。

参照URLは合計1,253件、参照ドメインは466でした。

一つの質問から複数の検索へ展開し、複数の情報源を組み合わせて回答するケースが中心だったことが分かります。

会計ソフト業界のAI検索回答の特徴と押さえるべきポイント

情報源は466ドメインに広がる一方、本文では上位製品の露出が大きい

参照元は広く分散しています。

466ドメインのうち329ドメイン、70.6%は今回1回しか参照されませんでした。一方で、本文に登場する名称も327件あり、そのうち257件、78.6%は1回答だけの登場です。

ただし、本文言及には明確な上位群があります。

言及ランキングを「総言及回数」ではなく、同一回答内での連呼に左右されにくい本文言及出現回答数で並べると、次のようになりました。

順位

製品・サービス

本文言及出現回答数

出現回答率

1

freee会計

68

68%

2

マネーフォワード クラウド会計

52

52%

3

弥生会計

36

36%

4

弥生会計 Next

30

30%

5

勘定奉行クラウド

19

19%

 

freee会計は法人・個人事業主向けに提供されている会計ソフト、マネーフォワード クラウド会計はひとり法人・中小企業向けを含むクラウド会計ソフトです。弥生会計 Nextは法人向けクラウド会計ソフトとして提供され、勘定奉行クラウドも会計業務向けクラウドサービスとして提供されています。

上位5名称の出現回答数を合計すると205件で、全327名称の出現回答数総和668件の30.7%を占めます。

つまり、多数の製品・サービスが一度だけ登場するロングテールがある一方、主要製品は幅広い質問で繰り返し名前が出ていました。

これは「327製品が均等に候補になる」という構造ではありません。

参照元はロングテールだが、上位サイトも繰り返し利用される

参照URL1,253件で、URL行数が多かったドメインは次の通りです。

順位

ドメイン

参照URL行数

1

yayoi-kk.co.jp

82

2

biz.moneyforward.com

78

3

onamae.com

55

4

freee.co.jp

54

5

aspicjapan.org

52

上位5ドメインだけで321/1,253=25.6%を占めました。

さらに「同じ回答内で同一ドメインを1件」として見ると、biz.moneyforward.comは55/100回答、yayoi-kk.co.jpは49/100回答、onamae.comは43/100回答、aspicjapan.orgは42/100回答、freee.co.jpは38/100回答で参照されました。

この結果では、会計ソフト事業者の公式サイトと、ASPICやITトレンド、ITreviewなどの比較・情報サイトの双方が情報源として使われています。

一方、466ドメイン中329ドメインは1回だけです。したがって「少数のサイトだけを見て回答している」とも、「すべての情報源が均等に使われている」とも言えません。

上位サイトが反復利用されながら、その外側に非常に長い参照元の裾野がある構造です。

「公式サイトが参照される」と「製品名が本文に出る」は同じではない

参照元と本文言及を比較すると、両者を一つの指標として扱えないことが分かります。

例えばマネーフォワードでは、biz.moneyforward.comが55/100回答で参照され、マネーフォワード クラウド会計は52/100回答で本文に登場しました。

一方、freee.co.jpは38/100回答で参照されましたが、freee会計は68/100回答で本文に登場しています。support.freee.co.jpも含めたfreeeの主要公式ドメイン群で見ても、参照された回答は51/100でした。

弥生では、yayoi-kk.co.jpとsupport.yayoi-kk.co.jpを合わせると58/100回答で公式情報が参照されています。一方で、本文上は「弥生会計」が36回答、「弥生会計 Next」が30回答と、製品名が分かれて登場しています。

ここで、公式サイトの参照が本文言及の原因になったと断定することはできません。第三者サイトが製品情報に利用されている場合もあれば、公式サイトが一般的な会計情報の参照元として使われる場合もあります。

ただし、実務上は**「自社サイトが何回答で情報源になったか」と「自社製品名が何回答で登場したか」を別々に測る必要がある**と言えます。

さらに次回以降、実際に導入候補として提示された回答を「推薦出現率」として分離すれば、情報源・認知・候補化という三つの段階を比較できます。

質問テーマによって、よく使われる情報源も変わる

100問を質問内容から10テーマに整理すると、参照元の構成にも違いが確認されました。

「全般・比較検討」の10回答では、freee.co.jpとyayoi-kk.co.jpがそれぞれ6/10回答、ITトレンドとITreviewがそれぞれ5/10回答で参照されています。

「利用者・事業属性」の10回答では、biz.moneyforward.comが8/10、yayoi-kk.co.jpとonamae.comがそれぞれ7/10でした。

「記帳・入力自動化」では、ASPICとbiz.moneyforward.comがそれぞれ5/10。

「業種別会計」ではASPICが7/10、onamae.comが6/10、biz.moneyforward.comが5/10です。

そして「契約前・体験・導入相談」の10回答では、biz.moneyforward.comとyayoi-kk.co.jpがそれぞれ7/10で参照されました。

この結果は、「会計ソフト」という一つのカテゴリでも、Geminiが質問目的によって利用する情報源を変えていることを示しています。

製品比較、個人事業主向け、業種特化、導入前相談では、同じ情報ページが一律に使われるわけではありません。

ただし各テーマは10問です。今回の結果だけで「このテーマでは必ずこのサイトが強い」と業界全体へ一般化することはできず、同じ質問セットでの継続確認が必要です。

「会計ソフト」を明示しない質問では、別カテゴリへ検索がずれるケースもあった

今回の調査では、非指名質問の作り方そのものにも重要な注意点がありました。

例えば、

「画面がわかりやすく、入力ミスを直しやすい候補を教えて」

という質問では、Geminiが使用したものとして記録された検索クエリが、

  • 入力しやすいツール

  • ユーザーインターフェース

  • 入力フォームのエラー修正

  • データ入力システム

などへ展開しました。

最終回答も会計ソフトではなく、入力フォームやUI設計についての一般的な説明になっています。

同様に、

「全国に拠点がある会社で使うので、離れた場所から同時利用できる候補を出して」

では、Zoom、Microsoft Teams、Google Meetなど遠隔共同作業ツールへ回答が広がりました。

「地方からでもオンラインで初期設定を依頼できるサービスは?」ではPCやIT機器のリモート設定サービス、「近くに販売店がなくても、オンラインで導入から研修まで依頼できるところは?」ではオンライン研修サービスが中心になっています。

「月払いで始められて、必要な機能を後から追加できるソフトは?」でも、会計ソフトではなくSaaS一般の料金モデルへ検索が展開しました。

今回確認した範囲では、少なくとも9問でこうしたカテゴリ外・汎用IT領域への展開が見られました。

これは、非指名性を高めるために製品名だけでなくカテゴリ名まで省くと、AIが別の検索意図へ展開する可能性があることを示しています。

「画面がわかりやすく、入力ミスを直しやすい会計ソフト」のように、ブランド名は入れず、対象カテゴリだけは明示した質問と比較することが次の検証になります。

会計ソフト企業がAI検索対策で次に検証すべきこと

今回の結果から、最初に確認したいのは本文言及、公式サイト参照、推薦を別々に計測することです。

freee会計のように本文言及率が高い製品でも、公式サイトが同じ割合で参照されるわけではありません。逆に公式情報が多く参照されても、特定製品名が同じ割合で候補に出るとは限りません。

会計ソフト提供企業であれば、まず100問をテーマ別に固定し、

  • 公式ドメイン参照回答率

  • 製品名本文言及率

  • 導入候補としての推薦出現率

をそれぞれ計測します。

次に、獲得したいテーマ別に公式情報を検証することです。

例えば銀行連携を重視するなら記帳・入力自動化、法人向け決算を重視するなら決算・税務、導入支援を強みにするなら契約前・導入相談の質問群を対象にします。

そのテーマで公式サイトが参照されるか、製品名が本文に登場するか、実際の候補として提示されるかを確認します。

機能ページや料金ページを修正すれば露出が増えると証明されたわけではないため、情報整理は「改善策」ではなく「検証施策」として実施し、同一質問・同一モデル条件で再測定する必要があります。

また、質問設計側では「会計ソフト」というカテゴリ語を残した場合と省いた場合を比較し、検索意図のずれがどの程度変化するかを確認すると、月次調査そのものの精度向上にもつながります。

調査の限界と次回検証

今回の調査は2026年9月に取得されたGeminiの100回答を分析したものです。

Geminiの具体的モデル名、GeminiアプリとAPIのどちらを使用したか、正確な実行日時、詳細な検索設定、会話履歴などは確認できません。

また、言及ランキングの327名称には製品名、会社名、関連サービス、一般的な名称などが混在しています。表記揺れも存在するため、「327の独立した会計ソフトが登場した」という意味ではありません。

さらに、今回の記事では本文言及を確認していますが、100回答すべてを同じ基準で「第一候補」「複数候補」「情報源・背景」などへ役割分類していません。そのため、本文言及順位を推薦順位として紹介していません。

前月までの同一定義データも今回提供されていないため、増加・減少・順位上昇などの月次変化は評価していません。

次月以降は質問セット、テーマ分類、AIの実行条件、表記統合ルールを可能な限り固定し、参照元出現率、本文言及率、推薦出現率を追跡することで、単月のランキングよりもAI検索上の変化を捉えやすくなります。

調査方法・出典

Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査では、会計ソフト業界に関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、取得された100回答、検索発火状況、回答生成時に使用されたものとして記録された検索クエリ、参照URL・ドメイン、回答本文に登場した企業・製品・サービスを分析しました。

企業と製品の関係や現在のサービス提供状況については、必要な範囲で各社公式サイトを確認しています。

出典:Queue株式会社「LLMOナビ 会計ソフト業界 AI検索可視化調査」(2026年9月)