美容医療を検討するとき、生成AIに「二重整形を相談するなら?」「シミ取りで通うなら?」「医療脱毛を始めるなら?」と相談する使い方が考えられます。では、Geminiはどの美容クリニックを回答に挙げ、どのWebサイトを情報源として参照しているのでしょうか。
Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査では、美容医療に関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、回答本文に登場したクリニック・サービスと、回答生成時に参照元として記録されたWebページを分析しました。
その結果、100回答中86回答でWeb検索が発火しました。また、表記を統合して本文を再集計すると、湘南美容クリニックは38回答に登場しました。一方で、クリニックの関連サイトが参照されることと、そのクリニック名が回答本文で候補として登場することは一致しません。
さらに、目元、肌、医療脱毛、鼻・輪郭、地域など質問テーマを変えることで、回答に登場するクリニックの構成も大きく変化しました。
調査概要
|
項目 |
内容 |
|
調査主体 |
Queue株式会社/LLMOナビ |
|
調査目的 |
美容医療領域におけるGemini回答内のクリニック名と参照元の可視化 |
|
対象業界 |
美容外科・美容皮膚科を中心とする美容医療 |
|
対象AI |
Gemini |
|
調査設計上の質問数 |
100問 |
|
取得回答数 |
100回答 |
|
分析対象回答数 |
100回答 |
|
調査年月 |
2026年9月 |
|
非指名と確認した質問数 |
100問 |
|
地域 |
JP |
|
言語 |
日本語 |
|
Web検索発火 |
86回答 |
|
事前学習ベース |
14回答 |
|
確認できなかった条件 |
Gemini詳細モデル、アプリ/APIの別、正確な実行日時、検索設定、会話履歴・個人化等 |
ここでいう「非指名質問」とは、特定の美容クリニック名を最初から指定せず、「二重整形を相談するならどこが合う?」「毛穴治療に強い美容皮膚科は?」「大阪で美容皮膚科を比較したい」といった悩みや条件から尋ねる質問です。
本記事で使う「参照元・本文言及・推薦」の読み方
本記事の「参照元」は、Geminiが回答を生成するときに参照したものとして記録されたWebページ・ドメインです。
「本文言及」は、クリニック名やサービス名が回答本文に1回以上登場した状態を指します。同じ回答の中で同じクリニック名が複数回登場しても1回答として数えます。
「推薦」は、単なる情報源や事例ではなく、受診・相談・施術を検討する具体的な候補として提示された場合を指します。
今回のレポートには全クリニックを統一基準で分類した推薦フラグがないため、本記事の主要ランキングには「本文言及出現回答数」を使用しています。
調査結果の全体像:100回答中86回答でWeb検索が発火
Queue株式会社のLLMOナビによる9月調査では、100回答中86回答でGeminiのWeb検索が発火しました。残る14回答は事前学習ベースとして記録されています。
検索が発火した86回答では、回答生成時に使用されたものとして記録された検索クエリは合計376件、1回答あたり平均4.37件、中央値4件でした。
参照元は延べ1,264レコードで、1,188の異なるURL、636の異なるドメインが確認されています。

検索発火率だけを見ると、美容医療についてGeminiが外部Web情報を取り込むケースは多いといえます。
ただし、すべての質問で検索が行われるわけではありません。
「美容外科に行く前に候補を比較したい」「初めて美容医療を受けるならどこがいい?」「大手と個人院で迷っている」など、比較的抽象度の高い質問では事前学習だけで回答した例がありました。
一方、目元施術の10問は10/10回答で検索が発火しています。
検索発火の有無は質問の具体性だけで決まるわけではありませんが、質問テーマによってGeminiの情報探索方法が変わることは確認できます。
美容医療業界のAI検索回答の特徴と押さえるべきポイント
今回の100回答から、大きく4つの特徴が確認されました。
第一に、湘南美容クリニックのように幅広い施術テーマで繰り返し登場するクリニックがある一方、特定施術に集中して登場するクリニックもあります。
第二に、Webサイトが参照元として使われることと、その運営クリニック名が回答本文に登場することは別の現象です。
第三に、同じ美容医療でも「目元」「医療脱毛」「肌治療」「鼻・輪郭」など質問テーマを変えると、候補クリニックの顔ぶれが入れ替わります。
第四に、質問文のカテゴリが曖昧な場合、美容医療以外の分野へ回答が広がるケースがあります。
このため、AI検索上の可視性は、業界全体の順位を一つ見るだけでは捉えにくく、「どの質問テーマで」「どの役割で」「どの情報源とともに」登場するかまで確認する必要があります。
表記統合後、湘南美容クリニックは38回答に登場
元の言及ランキングでは、「湘南美容クリニック」本体の出現回答数は33回答でした。
しかし回答本文を直接再集計すると、本院名だけでなく地域院名や「SBC湘南美容クリニック」などの表記も存在しています。同一クリニックと確認できる表記を回答単位で統合すると、湘南美容クリニックは38/100回答に登場しました。
続いて、TCB東京中央美容外科が20/100、品川美容外科が16/100、品川スキンクリニックが15/100、タカミクリニックが12/100でした。
水の森美容クリニックとエミナルクリニックは、それぞれ11/100回答です。

ただし、この順位はクリニックの医療技術、治療成績、安全性、患者満足度を評価したものではありません。
あくまで今回の100の質問に対して、Geminiの回答本文に名称が出た回答数を示しています。
美容医療は施術によって必要な専門性やリスクが大きく異なるため、AI上の露出順位をクリニック選びの品質ランキングとして扱うことは適切ではありません。
全体上位でも、施術テーマごとに候補は大きく入れ替わる
全体で最も多く登場した湘南美容クリニックは、複数のテーマにまたがって回答に登場しました。
目元施術では5/10回答、医療脱毛では6/10回答、地域を指定した質問では5/10回答に登場しています。
一方で、テーマを絞ると別のクリニックが目立つ場合があります。
水の森美容クリニックは全体では11/100回答ですが、目元施術10問では5回答に登場しました。
エミナルクリニックは全体11/100に対し、医療脱毛10問では6回答です。
品川スキンクリニックは全体15/100ですが、肌悩み・美肌治療9問では4回答、地域指定10問では6回答に登場しました。
タカミクリニックも全体12/100のうち、肌悩み・美肌治療では3/9回答に登場しています。

この違いは、AI検索の評価を「美容医療」という一つの業界キーワードだけで行うことの限界を示します。
たとえば美容皮膚科が自社のAI検索可視性を測るのであれば、「美容皮膚科 おすすめ」だけでなく、シミ、毛穴、ニキビ跡、肝斑など、自院が実際に扱う相談テーマごとに質問群を設計する必要があります。
同様に、美容外科であれば、二重、クマ取り、鼻整形、糸リフト、脂肪吸引などを分けて観測しなければ、AIが自院をどの領域の候補として認識しているかは把握できません。
「サイトが参照された回答数」と「クリニック名が出た回答数」は一致しない
今回特に明確だったのが、関連サイトの参照とクリニック名の本文言及の差です。
湘南美容クリニックは38回答で本文言及が確認されました。一方、s-b-c.netを参照元に含む回答は46回答でした。両方が同じ回答で確認されたのは25回答です。
TCB東京中央美容外科は本文言及20回答に対し、関連ドメインaoki-tsuyoshi.comの参照は9回答、両方が確認されたのは5回答でした。
品川美容外科は本文言及16回答、shinagawa.com参照19回答、両方10回答です。
品川スキンクリニックでは、本文言及15回答に対してshinagawa-skin.comは33回答で参照され、両方が確認されたのは15回答でした。
タカミクリニックは本文言及12回答、takamiclinic.or.jp参照21回答で、両方が確認されたのは12回答です。

つまり、自院サイトがAI回答の情報源として使われることと、自院名が実際の候補として回答本文に登場することは同じではありません。
反対に、関連サイトが同じ回答で参照されていなくても、クリニック名が本文に登場するケースもあります。
比較媒体、他の医療情報サイト、既存知識などを経由して名称が登場している可能性も考えられます。
ただし、このデータだけから「どのWebページがクリニックの推薦を生んだか」という因果関係までは確認できません。
AI検索対策では、「公式・関連サイトの参照回答数」と「クリニック名の本文言及回答数」を別々の指標として測定する必要があります。
抽象的な質問では、美容医療以外へ回答が広がるケースも
今回の調査では、質問文のカテゴリが曖昧な場合に、Geminiが美容医療以外の分野を回答するケースも確認されました。
たとえば、「オンライン予約できるところがいい」という質問では、ホテルや飲食店、スクールなどのオンライン予約サービスが中心に紹介され、美容クリニックの具体候補は提示されませんでした。
「カウンセリングだけ受けられる場所を知りたい」という質問では、心理カウンセリングルーム、公共相談窓口、オンラインカウンセリングなどが主な回答となりました。
「学生でも相談しやすいところはある?」では、大学の学生相談室、教育支援センター、心理相談窓口などが列挙されています。
「自然な仕上がりを相談できるところは?」では、美容医療だけでなく、美容室、メイク、ファッション、パーソナルカラーまで回答範囲が広がりました。
これは、Geminiが質問単体から「美容医療を探している」と判断できなかった可能性を示す観測です。
ただし、「美容医療」という語を入れれば必ず適切な候補が出るとは限りません。
次回検証では、検索意図をそろえたうえで、
「オンライン予約できるところがいい」
と、
「オンライン予約できる美容クリニックを知りたい」
のような質問ペアを作り、検索クエリ、参照元、クリニック名の出現がどう変化するかを確認する方法が考えられます。
参照元は636ドメイン。クリニック公式系と比較媒体の両方が使われる
今回の回答では、636の異なるドメインが参照元として確認されました。
回答単位で見ると、s-b-c.netは46/100回答、shinagawa-skin.comは33/100回答、takamiclinic.or.jpは21/100回答、my-best.comも21/100回答、shinagawa.comは19/100回答、mizunomori.comは18/100回答に登場しました。
上位にはクリニック関連サイトだけでなく、比較・情報系サイトも含まれています。
このことから、Geminiの美容医療回答は、単一の公式サイトだけではなく、複数種類の情報源を横断して生成されていることが分かります。
一方で、636ドメインという数だけを見て「情報が分散しすぎている」「信頼性が低い」と評価することはできません。
今後は、参照元をクリニック公式、比較・紹介媒体、医療専門媒体、公的機関・学会、口コミ・UGCなどに分類し、どの質問テーマでどの種類の情報源が使われるかを調べる必要があります。
AI検索対策で次に検証すべきこと
美容医療事業者が次に確認すべきなのは、まず施術テーマ別の可視性です。
美容皮膚科であれば、シミ、肝斑、毛穴、ニキビ跡、赤ら顔など、自院が提供する治療領域ごとに同じ質問セットを固定します。
美容外科であれば、二重、クマ取り、鼻、小顔、たるみ、脂肪吸引などを分けます。
そのうえで、
-
自院名が本文に出た回答数
-
自院関連ページが参照された回答数
-
実際の相談・受診候補として提示された回答数
を別々に測定します。
たとえば治療ページを見直す場合も、「ページを増やせばAIに推薦される」と結論づけるべきではありません。
対象治療について、適応、医師・診療体制、リスク、ダウンタイム、費用、アフターケアなどの情報を明確化した後、同じ質問・同じAI・同じ条件で再調査し、参照元出現率と本文言及率がどう変わるかを検証します。
また、抽象的な質問でカテゴリ認識が外れる問題については、サイト改善とは別に質問設計上の検証が必要です。
カテゴリを明示した質問と明示しない質問をペアにして、Geminiがどの検索クエリを生成し、どの業界を回答するのかを比較することで、AIが美容医療の検索意図をどの程度保持するかを確認できます。
調査の限界と次回検証
今回の調査は2026年9月に取得したGeminiの100回答を対象とする単月観測です。
ChatGPT、Google AI Overview、AI Modeなど、他のAI検索サービスへ結果を一般化することはできません。
Geminiの詳細モデル、アプリ/APIの別、正確な実行日時、会話履歴、個人化、検索設定など、一部の実行条件も確認できていません。
また、テーマによって質問数は異なり、一部のテーマは5問または9問です。このため、テーマ別の数字は統計的有意差を示すものではありません。
回答内には、症例数、料金、治療実績、診療時間などの具体的情報も含まれますが、今回の調査ではそれらの正確性を一つひとつ公式情報と照合していません。
AI回答への出現数は、クリニックの医療技術、安全性、治療成績、患者満足度を示すものでもありません。
次月以降は、同じ100問、同じテーマ分類、同じ表記統合ルールをできる限り固定し、検索発火率、本文言及率、関連ドメイン参照率、テーマ別出現率を継続して確認することが重要です。
調査方法・出典
Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査として、美容医療に関する100個の非指名質問をGeminiに入力しました。
100回答について、検索発火状況、回答本文、参照元URL・ドメイン、回答生成時に使用されたものとして記録された検索クエリを分析しています。
主要クリニックの本文言及は、回答本文を直接確認し、同一クリニックと判断できる院名・表記差のみ回答単位で統合しました。
一般用語、美容医療の診療カテゴリ、比較サイトなどは、固有クリニックとは区別しています。
出典:Queue株式会社「LLMOナビ 美容医療業界 AI検索可視化調査」(2026年9月)
