AIに「安いパッケージツアーが豊富な旅行会社は?」「添乗員付き海外ツアーならどこ?」「初めてのクルーズ旅行を相談するなら?」と尋ねたとき、どの旅行会社が回答に登場し、GeminiはどのWebサイトを情報源としているのでしょうか。

Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査では、旅行業界に関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、回答本文に登場した旅行会社・予約サービスと、参照元として記録されたWebページを分析しました。

結果を見ると、100回答中96回答でWeb検索が使われ、参照元ではJTB公式が58回答、阪急交通社公式が52回答に登場しました。一方、旅行の目的を細かく分けると、添乗員・バス旅行、体験旅行、記念旅行などで使われる情報源は大きく変わります。

調査概要

項目

内容

調査主体

Queue株式会社/LLMOナビ

調査目的

旅行業界におけるAI検索上の旅行会社・旅行サービスの可視性把握

対象

国内旅行、海外旅行、パッケージ、添乗員同行、バス、クルーズ、オーダーメイド等を探すユーザー

対象AI

Gemini

調査設計上の質問数

100問

取得回答数

100回答

非指名と確認できた質問数

100問

調査年月

2026年9月

地域・言語

JP/日本語

検索発火

96回答

事前学習

4回答

確認できない条件

Geminiの具体的モデル名、アプリ/API、正確な実行日時、詳細な検索設定、会話履歴等

「非指名質問」とは、「JTB」「HIS」など特定の旅行会社・サービス名を質問文にあらかじめ含めず、目的、予算、同行者、旅行形態、サポート条件などから候補を尋ねる質問です。

今回の100問には、国内・海外パッケージ、添乗員同行、現地係員、バスツアー、クルーズ、オーダーメイド旅行、テーマ旅行、イベント遠征、申込前の料金・変更条件などを含めました。

なお、本調査はGemini回答内での可視性を観測したものです。市場シェア、取扱高、旅行商品の品質、料金の安さや顧客満足度のランキングではありません。

本記事で使う「参照元・本文言及・推薦」の読み方

AI検索上の露出は、少なくとも三つに分ける必要があります。

参照元は、Geminiの回答生成時に情報源として記録されたWebページやドメインです。

本文言及は、回答本文に旅行会社やサービス名が1回以上登場した状態です。末尾の参照元一覧だけへの登場は含めません。

推薦は、その会社・サービスが予約・相談・利用候補として提示された状態です。

また、本記事の出現回答率は、100回答のうち対象が1回以上登場した回答の割合です。

今回のデータでは100回答すべてを同じ基準で推薦分類していないため、「本文に名前が出た=Geminiがおすすめした」とは扱いません。

調査結果の全体像|100回答中96回答でWeb検索が使われた

Queue株式会社のLLMOナビによる9月調査では、100回答中96回答で検索発火が記録されました。

検索発火した96回答では、Geminiの回答生成時に使用されたものとして459件の検索クエリが記録されています。検索発火回答あたり平均4.78件、中央値5件です。

参照URLは合計1,347件、ユニークな参照ドメインは458でした。

一つの質問から平均4〜5件程度の検索へ展開し、複数のWebページを確認しながら回答を構成するケースが中心だったことが分かります。

旅行業界のAI検索回答の特徴と押さえるべきポイント

今回の回答構造には、大きく三つの特徴がありました。

第一に、参照元は458ドメインへ広がりながらも、上位では大手旅行会社の公式サイトが繰り返し使われています。

第二に、本文に登場する旅行会社・サービスもロングテールですが、JTBや阪急交通社、HISなど複数の質問に繰り返し登場する名称があります。

第三に、旅行目的が変わると、Geminiが参照するサイトの顔ぶれも入れ替わります。

つまり「旅行会社のAI検索順位」を一つだけ見るより、国内・海外、添乗員同行、バス、クルーズ、体験旅行などに分けて確認する方が、実際の可視性を捉えやすくなります。

参照元458ドメインの68.6%は1回だけ

Geminiが参照した458ドメインのうち、314ドメイン、68.6%は今回1回しか参照されませんでした。

一方、URL行数上位5ドメインだけで354/1,347=26.3%を占めます。

参照元を回答単位で集計すると、上位は次の通りです。

順位

ドメイン

主な旅行サービス

参照回答数

1

jtb.co.jp

JTB

58

2

hankyu-travel.com

阪急交通社

52

3

nta.co.jp

日本旅行

43

4

his-j.com

HIS

40

5

club-t.com

クラブツーリズム

28

JTBは国内・海外ツアー、JR・航空券と宿泊を組み合わせる旅行商品、添乗員同行ツアーなどを提供しています。阪急交通社、日本旅行、HISも国内・海外旅行を幅広く扱い、クラブツーリズムはテーマ旅行やクルーズなど多様なツアーを提供しています。

今回の特徴は、上位5ドメインがいずれも旅行商品を実際に提供する事業者・サービス側のサイトだった点です。

比較サイトも使われています。例えばトラベルコのtour.ne.jpは20/100回答で参照されました。トラベルコは多数の予約サイトを横断比較する旅行比較サービスです。

ただし、「公式サイトが参照された=その会社が推薦された」とは言えません。公式サイトは料金やツアー条件、添乗員の有無、旅行商品などを確認する情報源として使われる場合もあるためです。

本文ではJTB、日本旅行、阪急交通社、HISなどが反復登場

本文言及については、集計シートに一部不整合がありました。

言及ランキングでは271名称と表示されている一方、実データでは1行欠落しています。別の集計と回答本文を照合すると、欠落していたのは「日本旅行」で、総言及62回、出現回答数52/100と確認できます。

この欠落を補正すると、本文言及の上位は表記揺れ統合前で次のようになります。

順位

旅行会社・サービス

本文言及回答数

出現回答率

1

JTB

66

66%

2タイ

日本旅行

52

52%

2タイ

阪急交通社

52

52%

4

HIS

48

48%

5

クラブツーリズム

31

31%

補正後の271名称のうち196名称、72.3%は1回答だけへの登場です。

一方、上位5名称の出現回答数は合計249件で、全名称×回答ペア787件の31.6%を占めました。

つまり、旅行業界のGemini回答には多数の旅行会社・予約サービスが登場するものの、すべてが均等に出るわけではありません。

多数の単発名称と、複数テーマで繰り返し登場する主要旅行ブランドが同時に存在しています。

なお、HISには「H.I.S.」などの別表記も存在するため、この表は企業単位へ完全正規化したランキングではありません。

全体順位以上に差が出たのは「何の旅行を探すか」

旅行業界で特に重要だったのは、質問テーマによって参照元が大きく変化したことです。

100問を10テーマ、各10問に分類して参照元を確認しました。

添乗員・現地係員・バスツアーでは阪急交通社が9/10回答

「添乗員が出発から帰国まで同行する海外ツアー」「日帰りバスツアー」「一人参加できるバス旅行」といった質問群では、hankyu-travel.comが9/10回答で参照されました。

club-t.comも7/10、hatobus.co.jpは4/10回答でした。

阪急交通社公式サイトでは海外ツアーを添乗員同行・現地係員同行等で絞り込め、国内バスツアーも提供しています。

このテーマでは、旅行業界全体の順位よりも、ツアー形態に対応した公式ページが情報源として目立っています。

体験・文化・テーマ旅行ではVELTRAが5/10回答

自然体験、ハイキング、美術館、料理、工芸、市場巡りなどを含む10回答では、veltra.comが5/10で参照されました。

club-t.com、hankyu-travel.com、jalan.net、nta.co.jpもそれぞれ4/10です。

大手旅行会社だけでなく、現地体験やアクティビティに近いサービスが参照元として浮上するテーマでした。

イベント・記念・旅程条件ではJTB公式が10/10回答

スポーツ観戦、コンサート遠征、記念旅行、卒業旅行、長距離を歩かない旅行、専用車送迎などを含むテーマでは、jtb.co.jpが10/10回答すべてで参照されました。

阪急交通社は7/10、HISは6/10、日本旅行は5/10です。

JTB公式ではスポーツ観戦、エンタメ、ハネムーン、テーマ別旅行など幅広い旅行商品を扱っています。

この結果から、旅行会社のAI検索可視性は「旅行会社 おすすめ」だけでは十分に評価できません。

添乗員付き海外旅行、クルーズ、文化体験、イベント遠征など、自社が獲得したい旅行目的ごとに質問を分ける必要があります。

「燃油関連費用」が旅行ではなく自動車燃料と解釈された例

質問設計上の注意点も確認されました。

「燃油関連費用や税金を含む総額で見積もりを出してくれる会社は?」という質問では、本来は海外旅行の燃油サーチャージや税金を含む旅行代金を想定していました。

しかしGeminiは「燃油関連費用」を自動車の燃料費として解釈し、ENEOS等の燃料カードや法人向け燃料費管理サービスについて回答しました。

旅行会社の比較から完全に別の業界へ回答意図が移っています。

この例は、「会社名を入れない非指名質問」と、「旅行であることまで省略すること」は別だと示しています。

例えば、

「海外旅行の燃油サーチャージや税金を含む総額で見積もりを出してくれる旅行会社は?」

のように旅行カテゴリを明示した質問との比較が必要です。

ただし、今回確認できたのは1回答です。この1件だけから、同じ語を使えば必ず誤解されるとは一般化できません。

地域質問では現在地がないと候補を絞れないケースもあった

「職場の近くで仕事帰りに旅行相談ができる店舗は?」という質問では検索が発火せず、Geminiは「具体的な職場の場所が不明なため店舗を特定できない」と回答しました。

「近く」「自宅の近く」「職場の近く」といった地域検索をAI検索可視化に使う場合、実際の場所が指定されているかどうかで回答構造が変わる可能性があります。

地域系の次回調査では、

  • 東京駅周辺

  • 新宿駅から徒歩圏内

  • 大阪市内

  • 福岡空港周辺

など具体的な地域条件を固定した質問を用意し、店舗・旅行会社名の出現や検索発火がどう変わるかを見ると、より実際の旅行相談行動に近い検証ができます。

旅行会社がAI検索対策で次に検証すべきこと

まず必要なのは、公式サイト参照・本文言及・推薦を別々に測ることです。

今回の9月調査では、JTB公式は58/100回答で参照され、JTBという名称は言及ランキング上66/100回答に登場しました。

阪急交通社では公式ドメイン52/100、本文言及52/100です。

しかし数字が同じでも、同一の52回答で公式サイトと会社名が共存しているとは限りません。

次回は主要旅行会社ごとに、

  • 公式ドメイン参照回答率

  • 会社・サービス名本文言及率

  • 実際の予約・相談候補としての推薦出現率

を分けて計測します。

次に、旅行テーマ別の可視性を確認することです。

添乗員同行を強みにする会社なら添乗員・周遊、クルーズを重視する会社ならクルーズ、現地体験を扱うサービスならアクティビティなど、自社の旅行商品と近い質問群だけを切り出します。

その質問群で、公式の商品ページ・ツアー検索ページ・料金条件・FAQ等が参照されるか、会社名が本文に出るか、予約候補として薦められるかを測定します。

また、旅行の専門用語が別の意味へ解釈される質問では、「旅行」「海外旅行」「旅行会社」などのカテゴリ語を残した比較質問を設定します。

ページを修正すればAI回答への露出が上がると今回の調査で証明されたわけではありません。そのため、Webページの整理や情報追加は効果を前提とした改善策ではなく、同じ質問・AI条件で再測定する検証施策として扱う必要があります。

調査の限界と次回検証

今回の調査は、2026年9月に取得されたGeminiの100回答を分析したものです。

Geminiの具体的モデル名、GeminiアプリとAPIのどちらを使用したか、正確な実行日時、詳細な検索設定、会話履歴などは確認できません。

言及ランキングにはHISとH.I.S.、JTBとJTBの個別サービスなど、企業・ブランド・サービスの粒度が異なる名称が含まれます。そのため271名称を「271社の旅行会社」とは扱えません。

また、言及ランキングで日本旅行の行が欠落するデータ不整合が確認されたため、今回は別集計と回答本文を照合して補正しました。次回以降はこの不整合が解消されているかも確認する必要があります。

全100回答を同じルールで第一候補、複数候補、比較窓口、情報源などへ分類していないため、本文言及ランキングを推薦ランキングとはしていません。

前月以前の同一定義データも今回入力されていないため、「増えた」「減った」「上昇傾向」といった月次変化は評価していません。

次月以降、質問セット、テーマ分類、AI実行条件、表記統合ルールを固定し、参照元出現率・本文言及率・推薦出現率を追跡することで、旅行会社のAI検索上の変化をより正確に把握できます。

調査方法・出典

Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査では、旅行業界に関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、取得された100回答、検索発火状況、Geminiの回答生成時に使用されたものとして記録された検索クエリ、参照URL・ドメイン、回答本文に登場した旅行会社・サービス名を分析しました。

質問一覧と回答データで質問番号の並びが一致しないため、シート横断集計では質問本文を基準に照合しています。

旅行会社・旅行サービスの現在の提供内容については、必要な範囲で各社公式サイトを確認しました。

出典:Queue株式会社「LLMOナビ 旅行業界 AI検索可視化調査」(2026年9月)