法律事務所を探す際、ユーザーがGoogle検索だけでなく生成AIに「借金の相談先は?」「ネットの誹謗中傷に強い法律事務所は?」と尋ねる場面が増えています。では、Geminiはどの法律事務所や相談サービスを回答に挙げ、どのWebサイトを情報源として参照しているのでしょうか。

Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査では、法律事務所・法律相談に関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、回答本文に登場した企業・サービスと、参照元として記録されたWebページを分析しました。

調査から見えてきたのは、単に「よく引用されるサイト」が、そのまま「よく相談先として名前を挙げられる法律事務所」になるわけではないという点です。また、質問内容が具体的になるほど、GeminiがWeb検索を利用する割合や、回答に登場する法律事務所の顔ぶれにも違いが確認されました。

調査概要

項目

内容

調査主体

Queue株式会社/LLMOナビ

調査目的

法律事務所領域におけるGemini回答内の参照元・企業名・サービス名の可視化

対象

法律事務所・法律相談サービス

対象AI

Gemini

調査設計上の質問数

100問

取得回答数

100回答

有効回答数

100回答

調査年月

2026年9月

非指名と確認できた質問

100問

地域

JP

質問文

日本語

Web検索発火

87回答

事前学習ベース

13回答

確認できなかった条件

Geminiの詳細モデル、アプリ/APIの別、正確な実行日時、会話履歴・個人化等

ここでいう「非指名質問」とは、特定の法律事務所やサービス名をあらかじめ含めず、「交通事故の示談交渉を頼むならどこがいい?」「企業間紛争の経験がある弁護士に相談したい」といった、利用者の目的や条件だけを指定した質問です。

本記事で使う「参照元・本文言及・推薦」の読み方

本記事では、「参照元」はGeminiの回答生成時に記録されたWebページやドメイン、「本文言及」は法律事務所・サービスなどの名称が回答本文に1回以上登場した状態を指します。

「推薦」は、その法律事務所やサービスが相談、依頼、検索などの具体的な候補として回答内で提示された場合を指します。ただし、元データには推薦専用のフラグがありません。そのため本記事では、数値ランキングには本文言及を用い、推薦については回答本文から役割が明確に確認できるケースに限定して扱います。

出現回答率は、100回答のうち何回答に対象が登場したかを表します。同じ回答内で同じ法律事務所が何度登場しても1回答として数えます。

調査結果の全体像:87%の回答でWeb検索が発火

100回答のうち、GeminiがWeb検索を発火したのは87回答でした。残る13回答は、記録上「事前学習」とされています。

検索を発火した87回答では、回答生成時に使用されたものとして記録された検索クエリが平均4.4件、中央値4件でした。また、1回答あたりの参照元レコードは平均14.5件、ユニークドメインは平均13.1件です。

全体では668の異なるドメイン、1,159の異なるURLが確認され、参照元レコードは延べ1,264件に上りました。

この数字から分かるのは、法律相談のAI回答が一つのサイトだけを参照して作られているわけではないことです。検索が発火した回答では、複数の検索クエリと複数のドメインを横断して回答が構成されていました。

一方で、参照されることと、本文で相談先として名前を挙げられることは分けて見る必要があります。

法律事務所業界のAI検索回答の特徴と押さえるべきポイント

Queue株式会社のLLMOナビによる9月調査では、法律事務所領域のAI回答に大きく3つの特徴が確認されました。

第一に、質問が具体的な法律問題を含む場合にはWeb検索が発火しやすい一方、抽象的な「選び方」や位置情報が不足した質問では、一般論の回答にとどまるケースがありました。

第二に、法律事務所の公式サイトは参照元として頻繁に利用されても、その法律事務所名が必ず本文に登場するわけではありません。

第三に、全体で出現数が多い法律事務所でも、質問テーマを変えると候補の構成が入れ替わります。「法律事務所」という一つのカテゴリだけでAI検索上の可視性を見るのではなく、離婚、相続、債務整理、刑事、ネットトラブル、企業法務など、相談目的ごとに確認する必要があります。

具体的な案件テーマでは検索発火率が高く、抽象的な質問では一般論になるケースも

100問を質問文だけから10テーマに分けると、検索発火率には違いがありました。

「離婚・相続」と「ネットトラブル・債権回収」は10問すべてで検索が発火しました。一方、「全般・費用・選定」は7/10、「地域・アクセス・多拠点」は8/10、「相談前・依頼前」は8/10でした。

例えば、「初めて弁護士に相談するなら、話を丁寧に聞いてくれるところのおすすめは?」という質問では検索は発火せず、Geminiは特定の法律事務所を直接推薦せずに、相談時の雰囲気、説明の丁寧さ、弁護士会、法テラスなどの探し方を案内しました。

「自宅の近くで、対面の法律相談に行くならどこ?」という質問も、場所が指定されていないため、具体的な事務所ではなく弁護士会、法テラス、市区町村の法律相談などの一般的な探し方を提示しています。

対して、「匿名投稿者の特定を相談するなら、取扱経験がある法律事務所のおすすめは?」という質問では検索が発火し、ベリーベスト法律事務所、Authense法律事務所など複数の具体的な候補が列挙されました。

ただし、各テーマは10問ずつであり、この結果だけから「具体的な質問なら必ず検索する」と一般化することはできません。ここで重要なのは、質問の具体性や条件によってAIの回答生成プロセス自体が変わり得ることです。

「公式サイトが参照された回答数」と「事務所名が本文に出た回答数」は一致しない

今回もっとも明確だったのが、参照元と本文言及の違いです。

表記ゆれを統合し、主要法律事務所について回答単位で再集計すると、ベリーベスト法律事務所は本文で27回答に登場しました。一方、同事務所の関連公式ドメイン「vbest.jp」を含む参照元は31回答で確認されています。そのうち、公式サイトの参照と本文言及が同じ回答で確認できたのは23回答でした。

弁護士法人ALG&Associatesでは、関連公式ドメインが19回答で参照されたのに対して、本文言及は9回答、両方が確認できたのは8回答でした。TLEO虎ノ門法律経済事務所でも、公式ドメインは18回答で参照されましたが、本文言及は11回答です。

つまり、「公式サイトがGeminiに読まれた」という事実だけでは、「その事務所が利用候補として回答本文に出る」とは限りません。

逆に、ベリーベスト法律事務所では、本文に名前が出ているものの同じ回答で関連公式サイトが参照されていないケースも4回答ありました。

参照元一覧と本文に同じ企業が存在していても、その参照元が企業の推薦を直接生み出したと断定することはできません。しかしAI検索の可視性を計測する際には、「自社サイトが参照されたか」と「自社名が回答に出たか」を別々のKPIとして見る必要があることが分かります。

法テラス28回答、ベリーベスト27回答。ただしAI回答内での役割は異なる

回答本文を表記統合して再集計すると、法テラスは28/100回答、ベリーベスト法律事務所は27/100回答で確認されました。

数字だけを見ると近い結果ですが、回答内での役割は異なります。

法テラスは、費用を抑えたい場合や債務整理、相談先が分からない場合、正式依頼前に相談したい場合などで、相談窓口・支援制度として幅広く登場しました。「全般・費用・選定」では5/10、「債務整理・交通事故」で5/10、「労働・刑事」で4/10、「消費者被害・不動産・近隣」で4/10、「相談前・依頼前」で4/10回答に登場しています。

一方、ベリーベスト法律事務所は具体的な依頼候補として登場するケースが多く、「ネットトラブル・債権回収」で6/10、「地域・アクセス・多拠点」で5/10、「債務整理・交通事故」で5/10回答に登場しました。

この結果は、単純な「AI検索1位、2位」という見方だけでは回答構造を捉えにくいことを示しています。公的な相談窓口、法律事務所、弁護士検索サービスなどは、同じ回答に登場していてもユーザーに提供している役割が異なるためです。

総合的に多く出る事務所だけでなく、質問テーマに応じて専門候補が入れ替わる

全体の出現数だけを見ると、複数分野を扱う総合法律事務所が上位になりやすい結果でした。しかし質問テーマ別に見ると、異なる法律事務所が前面に出るケースがあります。

例えばAuthense法律事務所は、今回の再集計では全体8/100回答でしたが、そのうち「ネットトラブル・債権回収」で3/10、「企業法務・知財・顧問」で3/10回答に登場しました。

「取引先から損害賠償を求められたので、企業間紛争の経験がある弁護士で相談を予約したい」という質問では、栗林総合法律事務所、東京スタートアップ法律事務所、ベリーベスト法律事務所、Authense法律事務所、TLEO虎ノ門法律経済事務所、咲くやこの花法律事務所などが候補として提示されています。

また、「匿名投稿者の特定」という質問では、ベリーベスト法律事務所、Authense法律事務所、岡野法律事務所、弁護士法人LEON、弁護士法人エースなど、ネット上の誹謗中傷や発信者情報開示を扱う候補へ回答が切り替わりました。

AI検索で自社の可視性を確認するときは、業界全体の100問を一つにまとめて順位を見るだけでは不十分です。「どの相談テーマで出るのか」「どのテーマでは出ないのか」を分けて確認することで、自社がAIにどの領域の相談先として認識されているかを把握しやすくなります。

AI検索対策で次に検証すべきこと

今回の結果から、法律事務所が次に確認すべきポイントは、まず「参照」と「本文言及」を分けて計測することです。

自社サイトが頻繁に参照されていても事務所名が回答に出ていないのであれば、情報源としては利用されている一方で、相談先との結び付きが弱い可能性があります。逆に、本文では名前が出るのに自社サイトが参照されない場合、第三者媒体やGeminiの既存知識を経由して認識されている可能性を検証できます。

次に、相談テーマごとの情報を確認する必要があります。離婚、相続、債務整理、交通事故、労働問題、刑事事件、ネットトラブル、企業法務などについて、取扱範囲、相談条件、費用、相談方法、対応地域、受付時間、依頼後の流れなどが公式ページ上で明確になっているかを確認します。

これは「ページを増やせばAIで上位になる」という意味ではありません。ページの情報を整備した後、同じ質問・同じモデル・同じ条件で再調査し、公式サイトの参照回答数、本文言及回答数、候補提示された回答数が変化するかを検証する必要があります。

名称の一貫性も確認項目です。今回のデータには「法テラス」「法テラス(日本司法支援センター)」や、TLEO虎ノ門法律経済事務所の空白差など、同じ対象を示す複数表記が存在しました。月次でAI検索可視性を測る場合は、同一企業・サービスの表記統合ルールを固定しなければ、順位変動と単なる表記ゆれを区別できません。

調査の限界と次回検証

今回の調査対象はGeminiの回答のみです。ChatGPT、Google AI Overview、AI Modeなどの結果に一般化することはできません。

また、Geminiの詳細なモデルバージョン、アプリかAPIか、正確な実行日時、会話履歴や個人化の有無など、一部の実行条件は確認できませんでした。各テーマも10問単位の観測であり、統計的な有意差や法律事務所業界全体の普遍的な傾向を証明するものではありません。

回答内に記載された料金、実績、対応条件なども、今回の調査では一つひとつ正確性を検証したものではありません。AI検索での出現順位は、法律事務所のサービス品質や弁護士の能力を評価するランキングでもありません。

次月以降は、同じ100問と分類ルールを固定したうえで、検索発火率、公式サイト参照回答率、本文言及回答率、テーマ別出現率を継続観測することで、単月の揺れと継続的な変化を区別することが重要です。

調査方法・出典

Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査として、法律事務所・法律相談に関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、100回答について検索発火状況、回答本文、参照元URL・ドメイン、回答生成時に使用されたものとして記録された検索クエリを分析しました。

企業・サービスの本文言及は回答単位で集計し、同一実体と確認できる名称の表記ゆれのみを統合しています。企業とサービス、ポータルと法律事務所など、役割が異なる対象は原則として別に扱っています。

出典:Queue株式会社「LLMOナビ 法律事務所 AI検索可視化調査」(2026年9月)