サイバーセキュリティ製品や支援会社をAIに尋ねたとき、回答にはどの企業・製品が登場し、その情報はどのWebサイトをもとに組み立てられているのでしょうか。
Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査では、サイバーセキュリティに関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、回答本文に登場した企業・サービス・製品と、参照元として記録されたWebページを分析しました。
調査では、100回答中96回答で検索が使われ、1,436件の参照URLが750ドメインに広がっていました。一方、回答本文でも808の企業・サービス・製品等の名称が確認され、その84.4%は1回答だけに登場しています。
今回の結果からは、AI検索上の露出を単純な「有名企業ランキング」だけで捉えることが難しく、質問テーマと情報源の役割を分けて観測する必要性が見えてきます。

調査概要
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項目 |
内容 |
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調査主体 |
Queue株式会社/LLMOナビ |
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調査目的 |
サイバーセキュリティ業界におけるAI検索上の企業・製品・サービスの可視性把握 |
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対象 |
セキュリティ製品・支援会社・診断・運用サービス等を探す質問 |
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対象AI |
Gemini |
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調査設計上の質問数 |
100問 |
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取得回答数 |
100回答 |
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非指名と確認できた質問数 |
100問 |
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調査年月 |
2026年9月 |
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地域 |
JP |
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検索発火 |
96回答 |
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事前学習 |
4回答 |
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確認できない条件 |
Geminiの具体的モデル名、アプリ/APIの別、正確な実行日時、会話履歴、詳細な検索設定など |
「非指名質問」とは、特定企業や製品名をあらかじめ指定せず、「自社に必要なサイバーセキュリティを相談するならどこがいい?」「ランサムウェア対策を強化したいので端末保護製品の候補を教えて」といった条件や課題から候補を尋ねる質問です。
質問内容は、選定・費用、地域・拠点対応、企業規模・業種、端末・ネットワーク、メール・Web、クラウド・認証、データ保護・バックアップ、脆弱性診断・監視、インシデント対応・教育、契約前条件という10のテーマに整理できます。
なお、今回測っているのはGeminiの回答内での露出です。企業規模、市場シェア、製品品質、実利用者の評価を測った調査ではありません。
本記事で使う「参照元・本文言及・推薦」の読み方
本記事では、AI検索上の露出を三つに分けます。
参照元は、Geminiの回答生成時に情報源として記録されたWebページやドメインです。
本文言及は、回答本文に企業名、製品名、サービス名などが1回以上登場した状態です。参照元一覧だけに名称が存在する場合は含めません。
推薦は、その企業や製品が購入・導入・相談・依頼などの候補として提示された状態です。
今回のレポートには100回答を同じ基準で推薦分類したデータがないため、本文に名前が出たことを、そのまま「Geminiがおすすめした」とは扱いません。
調査結果の全体像|100回答中96回答で検索が発火
Queue株式会社のLLMOナビによる9月調査では、100回答のうち96回答で検索発火が記録されました。
検索発火した96回答では、Geminiの回答生成時に使用されたものとして合計438件の検索クエリが記録されています。検索発火した回答だけで計算すると、1回答あたり平均4.56件です。
さらに、回答には合計1,436件の参照URLが記録されました。
つまり今回の質問群では、多くの回答が単一の検索ではなく、複数の検索クエリと複数の情報源を組み合わせて生成されていました。
この構造を考えると、AI検索対策で確認すべきなのは「自社サイトが検索されるか」だけではありません。どのような質問からどの検索語へ展開され、どのページ群と一緒に参照されるかまで見る必要があります。
サイバーセキュリティ業界のAI検索回答の特徴と押さえるべきポイント
750ドメインの69.2%は1回しか参照されていない
1,436件の参照URLは750ドメインに分散していました。
そのうち519ドメイン、69.2%は今回の調査で1回だけ参照されています。
参照URL行数が多かった上位ドメインは次の通りです。
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順位 |
ドメイン |
参照URL行数 |
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1 |
aspicjapan.org |
40 |
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2 |
itreview.jp |
38 |
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3 |
it-trend.jp |
31 |
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4 |
hitachi-solutions.co.jp |
19 |
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4 |
ntt.com |
19 |
上位5ドメインの合計は147件で、1,436件全体の10.2%です。
つまり、上位サイトは繰り返し使われているものの、参照元全体の大半を占めるわけではありません。
ASPIC、ITreview、ITトレンドのような製品・サービスを比較検討するためのサイトが上位に並ぶ一方、日立ソリューションズなど事業者側の公式サイトも参照されています。ITreviewは法人向けIT製品・SaaSのレビュー・比較プラットフォーム、ITトレンドは法人向けIT製品の比較・資料請求サイトとして運営されています。

ここから「比較サイトの方が公式サイトより重要」と結論づけることはできません。重要なのは、情報源の種類が一つに固定されていないことです。
本文側もロングテール。最多でも100回答中9回答
参照元だけでなく、本文で登場する企業・製品等も広く分散しています。
言及ランキングでは808の名称が確認され、そのうち682名称、84.4%は100回答のうち1回答にしか登場しませんでした。
本文言及出現回答数で見ると、上位は次の通りです。
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対象 |
出現回答数 |
出現回答率 |
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日立ソリューションズ |
9 |
9% |
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ESET |
7 |
7% |
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GSX |
7 |
7% |
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TISI株式会社 |
7 |
7% |
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株式会社ラック |
7 |
7% |
最多の日立ソリューションズでも9/100です。
また、この上位にはESETのようなセキュリティ製品・ブランドと、日立ソリューションズ、GSX、TISI、ラックのような企業が混在しています。ESETは法人向けサイバーセキュリティも提供し、GSXはサイバーセキュリティ専門企業、ラックはセキュリティソリューションを事業として展開しています。

この結果だけを見る限り、サイバーセキュリティ関連の100問で、特定の1社・1製品が幅広い質問を独占している状態は確認できませんでした。
一方で、808名称の多さだけを理由に「どの企業にもAI回答へ入り込む余地がある」と判断するのも早計です。質問テーマを固定したときにも同じ分散が起こるのかを確認する必要があります。
質問テーマによって、参照される情報源が入れ替わる
全体ランキングより実務上重要なのが、質問テーマによる参照元の違いです。
たとえば「クラウド・認証・アクセス管理」の10回答では、ITreviewが7回答、ASPICが5回答、ITトレンドが5回答で参照されました。
「端末・ネットワーク保護」の10回答でも、ASPICが6回答で参照されています。
一方、「脆弱性診断・監視運用」の10回答では、gmo-cybersecurity.comとgsx.co.jpがそれぞれ4回答で参照されました。
「インシデント対応・教育・評価」の10回答ではgsx.co.jpが5回答、「契約前・試用・移行条件」の10回答ではlac.co.jpが4回答で参照されています。
GSXは脆弱性診断やセキュリティコンサルティング、教育などを提供する専門企業であり、ラックもセキュリティ監視やインシデント対応などを展開しています。

この違いは、AI検索上の可視性を「業界全体で何位か」だけで評価すると見えにくい部分です。
製品選定の質問では比較・レビュー型の情報源が使われ、脆弱性診断やインシデント対応といった専門性の高い質問では、専門事業者の公式サイトが繰り返し参照されるケースが確認されました。
ただし、各テーマは10問です。今回の結果だけから「診断領域では必ず専門企業が優位」と業界全体へ一般化することはできません。
次回も同じ質問テーマを固定し、この構造が再び確認できるかを見る必要があります。
「セキュリティ」という言葉がサイバー以外へ広がるケースもある
今回の調査では、質問文の意味がAIの検索展開によって別方向へ広がる事例も確認されました。
たとえば「今ある対策を確認して、予算に合わせた提案をする業者を選びたい」という質問では、記録された検索クエリに「リフォーム業者」「無料相談 リフォーム 予算」が含まれました。
また「郊外の拠点まで機器の設置に来てもらえるセキュリティ業者」という質問では、「防犯カメラ」「ホームセキュリティ」といった検索へ展開しています。
このほかにも「警備」「物理セキュリティ」といった語が追加された回答がありました。
サイバーセキュリティの文脈では、「セキュリティ」「対策」「監視」「機器設置」といった言葉が、物理防犯でも使用されます。
そのため、AI検索の可視性調査では質問の意味を人間側が理解できるだけでは不十分です。「サイバーセキュリティ対策」「ネットワーク機器」「ITセキュリティ監視」など、AIが対象領域を識別できる表現になっているかも確認する必要があります。
ただし、工場セキュリティのようにサイバーと物理対策を併せて検討することが妥当なケースもあります。物理セキュリティ関連語が含まれたこと自体を、一律に誤りとは判断できません。
AI検索対策で次に検証すべきこと
今回の結果から、サイバーセキュリティ企業が次に検証したいのは「全体で何回出たか」だけではありません。
まず、自社が獲得したい質問テーマを分けて測定することです。
脆弱性診断を主力とする企業であれば、「セキュリティ会社 おすすめ」という広い質問よりも、「Webアプリの脆弱性診断」「診断後の再診断」「侵入テスト」などの質問群で自社の公式ページが参照されるか、企業名が本文へ登場するかを確認する方が、実際の顧客接点に近い検証になります。
次に、公式サイトの参照と本文言及を別指標として追うことです。
自社サイトが情報源として使われても、自社名が候補として回答へ出るとは限りません。逆に企業名が本文に登場していても、第三者の比較サイトや記事が主な情報源となっている場合があります。
「参照元出現回答率」と「本文言及出現率」を分け、さらに可能であれば「推薦出現率」を追加することで、AIが自社を情報源として見ているのか、候補企業として見ているのかを区別できます。
三つ目は、ページ追加をすぐ改善策と決めつけず、テーマごとに検証することです。
たとえば診断領域で公式サイトが多く参照されているのであれば、診断対象、対応範囲、実施方法、診断後の支援などの情報を整理し、同じ質問セットで再測定することが検証施策になります。
施策後は、同じGemini、同じ質問、同じ地域・言語条件で、公式ドメインの参照率と企業名の本文言及率が変わるかを見る必要があります。
調査の限界と次回検証
今回の調査は2026年9月に取得されたGeminiの100回答を分析したものです。
Geminiの具体的モデル名、GeminiアプリとAPIのどちらを使用したか、正確な実行日時、詳細な検索設定、会話履歴などは確認できません。
また、企業・サービス・製品の本文言及は確認できますが、「第一候補」「複数候補の一つ」「単なる情報源」といった役割を全100回答で統一分類したデータはありません。そのため、本文言及順位を推薦順位として紹介していません。
前月までの同一定義データも今回提供されていないため、「増えた」「減った」「順位が上がった」といった月次変化も評価していません。
次月は、今回の100問と測定条件を可能な限り固定し、参照元出現率、本文言及出現率、推薦出現率、テーマ別出現率を分けて追跡することで、AI検索上の可視性がどのように変化したかをより正確に判断できます。
調査方法・出典
Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査では、サイバーセキュリティ業界に関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、取得された100回答、検索発火状況、回答生成時に使用されたものとして記録された検索クエリ、参照URL・ドメイン、回答本文に登場した企業・サービス・製品等を分析しました。
企業・サービスの分類や、調査時点で変化し得る名称については必要な範囲で公式Webサイトを確認しています。
出典:Queue株式会社「LLMOナビ サイバーセキュリティ業界 AI検索可視化調査」(2026年9月)
