AIに「安くて丁寧な引越し会社は?」「一人暮らしの引越しならどこがいい?」「梱包から設置まで任せられる会社は?」と質問したとき、どの会社が回答に登場し、GeminiはどのWebサイトを情報源としているのでしょうか。

Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査では、個人向け引越し業界に関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、回答本文に登場した会社・サービスと、参照元として記録されたWebページを分析しました。

その結果、回答本文ではアート引越センターが65/100回答、サカイ引越センターが62/100回答に登場しました。一方、参照元では引越し侍やSUUMO引越し見積もりなどの比較サービスと、各引越し会社の公式サイトが混在しています。

AI検索上で「情報源になること」と「会社名が回答に出ること」は、同じ可視性ではありません。

調査概要

項目

内容

調査主体

Queue株式会社/LLMOナビ

調査目的

個人向け引越し業界におけるAI検索上の会社・サービスの可視性把握

対象

個人で引越し会社や関連サービスを探すユーザーを想定した質問

対象AI

Gemini

調査設計上の質問数

100問

取得回答数

100回答

非指名と確認できた質問数


100問

調査年月

2026年9月

地域・言語

JP/日本語

検索発火

98回答

事前学習

2回答

確認できない条件

Geminiの具体的モデル名、アプリ/API、正確な実行日時、詳細な検索設定、会話履歴等

「非指名質問」とは、「アート引越センター」「サカイ引越センター」など特定の会社・サービス名を質問文にあらかじめ含めず、距離、荷物量、世帯属性、予算、必要な作業などから候補を尋ねる質問です。

今回の100問は、全般・比較検討、地域・距離、学生・新社会人、単身、夫婦・子育て、高齢者、特殊荷物、オプション、見積もり条件などに分かれています。

なお、本調査はGemini回答内での露出を調べたものであり、実際の契約件数、市場シェア、料金の安さ、作業品質、利用者満足度を順位付けしたものではありません。

本記事で使う「参照元・本文言及・推薦」の読み方

AI検索上の露出を見る際は、少なくとも三つに分ける必要があります。

参照元は、Geminiの回答生成時に情報源として記録されたWebページやドメインです。

本文言及は、回答本文に引越し会社やサービス名が1回以上登場した状態です。末尾の参照元一覧だけへの登場は含めません。

推薦は、その会社・サービスが実際の見積もり先や依頼候補として提示された状態です。

また、出現回答率は、100回答のうち対象が少なくとも1回登場した回答の割合を指します。

今回のデータでは100回答すべてを同じ基準で推薦分類していないため、「本文に名前が出た会社=Geminiがおすすめした会社」とは扱いません。

調査結果の全体像|100回答中98回答でWeb検索が使われた

Queue株式会社のLLMOナビによる9月調査では、100回答中98回答で検索発火が記録されました。

検索発火した98回答では、Geminiの回答生成時に使用されたものとして448件の検索クエリが記録されています。検索発火回答あたり平均4.57件、中央値は4件です。

参照URLは1,382件、ユニーク参照ドメインは449でした。

今回の質問群では、一つの質問に対して複数の検索クエリを生成し、複数のWebサイトを参照して回答するケースが中心だったことが分かります。

引越し業界のAI検索回答の特徴と押さえるべきポイント

参照元は449ドメインへ広がる一方、本文では上位会社の露出が大きい

参照元にはロングテールが確認されました。

449ドメインのうち313ドメイン、69.7%は今回1回だけ参照されています。

一方、参照URL行数上位5ドメインは合計330/1,382=23.9%を占めています。

つまり、非常に多くのWebサイトが一度だけ使われる一方、繰り返し参照される情報源も存在する構造です。

本文言及側でも229名称のうち161名称、70.3%は1回答だけへの登場でした。

ただし、上位会社の露出は大きくなっています。

順位

会社・サービス

本文言及回答数

出現回答率

1

アート引越センター

65

65%

2

サカイ引越センター

62

62%

3

アーク引越センター

45

45%

4

ハート引越センター

36

36%

5

日本通運

32

32%

上位5名称だけで240件となり、全名称の出現回答数総和687件の34.9%を占めています。

アート引越センター、サカイ引越センター、ハート引越センター、日本通運はいずれも現在、単身・家族等を対象とした引越しサービスを公式に案内しています。

「229名称が登場した」ことだけを見ると回答候補が非常に広いように見えますが、実際にはアート引越センターとサカイ引越センターだけでもそれぞれ6割以上の回答に名前が出ています。

多数の単発名称と、反復して登場する上位会社が同時に存在していることが、このデータの特徴です。

情報源の上位には「比較サービス」と「引越し会社公式」が混在する

参照元出現回答数を見ると、本文言及ランキングとは違う顔ぶれになります。

順位

ドメイン

主な役割

参照された回答数

1

hikkoshizamurai.jp

引越し比較・予約

59

2

the0123.com

アート引越センター公式

55

3

hikkoshi.suumo.jp

引越し見積もり・比較

48

4

homes.co.jp

住まい・引越し情報

46

5

nipponexpress.com

日本通運公式

43

引越し侍は複数の引越し会社の料金やサービスを比較し、予約までできるサービスです。SUUMO引越し見積もりも、複数社へ一括で見積もりを依頼し、価格や条件を比較するサービスとして提供されています。

ここで注目したいのは、比較サービスが情報源として頻繁に使われても、そのサービス自体が本文上の主要な引越し候補になるわけではない点です。

引越し侍は59回答で参照されていますが、「引越し侍」という名称自体の本文言及は17回答でした。

SUUMO引越し見積もりも、参照は48回答、本文言及は16回答です。

これは、比較サービスが「引越し会社を選ぶための情報源・窓口」として使われるケースと、実際の引越し会社が「候補として名前を挙げられる」ケースを区別する必要があることを示しています。

ただし、今回の分析では全回答を推薦役割まで分類していないため、本文言及17件・16件をそのまま「比較サイトが推薦された回数」とは扱えません。

公式サイト参照が多い会社と、本文に名前が出る会社は一致しない

会社公式サイトの参照数と、会社名の本文言及数を比べても、両者は一致しません。

会社

公式ドメイン参照回答数

会社名本文言及回答数

単純な率差

アート引越センター

55

65

+10ポイント

サカイ引越センター

39

62

+23ポイント

アーク引越センター

26

45

+19ポイント

ハート引越センター

22

36

+14ポイント

日本通運

43

32

-11ポイント

例えばサカイ引越センターは62回答で会社名が本文に登場しましたが、hikkoshi-sakai.co.jpが参照された回答は39回答でした。

一方、日本通運は逆で、nipponexpress.comが43回答で参照されたのに対し、「日本通運」の本文言及は32回答です。

つまり、「公式サイトが多く参照されるほど会社名が多く出る」という単純な関係ではありません。

公式サイトが引越しの手順や料金、荷物量、輸送方法などの情報源として使われても、その回答で会社自体を候補として提示しない場合があります。逆に、比較サービスや第三者ページを経由して会社名が本文へ登場する可能性もあります。

今回のデータだけで参照元と会社名言及の因果関係は証明できませんが、実務では**「公式サイトが参照された回答率」と「会社名が本文に出た回答率」を別々に追跡する必要があります。**

単身・家族・特殊荷物で、Geminiが参照するサイトは変わる

100問を質問内容から10テーマに分けると、主要参照元の顔ぶれにも違いが確認されました。

「全般・比較検討」の10回答ではnipponexpress.comが8/10、引越し侍、homes.co.jp、ENECHANGEがそれぞれ7/10でした。

「地域・距離・移動条件」ではhomes.co.jpが8/10、SUUMO引越し見積もりが6/10。

「学生・新社会人」では、引越し侍、アート引越センター公式、エイブル引越サービス関連のmoving.able.co.jpがそれぞれ7/10でした。

「単身・一人暮らし」ではthe0123.comが9/10、SUUMO引越し見積もりが8/10、引越し侍と日本通運公式がそれぞれ7/10です。

「夫婦・子育て世帯」でもthe0123.comが9/10、アーク引越センター公式とサカイ引越センター公式が各7/10でした。

「特殊荷物・住環境・仕事」では、サカイ引越センター公式とアート引越センター公式が各7/10、日本通運公式が6/10。

「見積もり・契約前条件」では、引越し侍が7/10、SUUMO引越し見積もりが6/10、サカイ引越センター公式が5/10でした。

この結果から、AI検索対策を「引越し会社 おすすめ」の一つの質問だけで測ると、実際の可視性を見誤る可能性があります。

単身、家族、学生、特殊荷物、見積もり条件では、Geminiが参照する情報源が同じではありません。

引越し会社側は、自社が獲得したい顧客層・利用場面に近い質問群で可視性を確認する必要があります。

「引越し」を省いた質問では、別業界へ検索がずれるケースもあった

今回、質問設計そのものにも注意すべき例がありました。

「予算に合わせて作業内容を調整できる業者の候補を教えて」という質問では、検索クエリが「予算内 プロジェクト 委託」「コスト削減 提案 企業」などへ展開しました。

最終回答も、引越し会社ではなく、コンサルティング会社、Web制作・システム開発会社、リフォーム業者、広告会社などの説明が中心です。

また、

「一人暮らしで段ボール数箱しかない人向けの配送先を見つけたい」

という質問では、単身引越しだけでなく、宅配便、トランクルーム、コンビニ受取、郵便局での荷物保管などへ検索が広がりました。

この2例は、会社名を指定しない「非指名」と、業界カテゴリまで省略することは別であることを示しています。

「予算に合わせて作業内容を調整できる引越し業者」「段ボール数箱だけを運べる引越しサービス」のように、会社名は指定せず、カテゴリ語だけを残した質問との比較が次の検証になります。

今回の2例だけで「カテゴリ語を省くと必ず誤答になる」とは言えませんが、月次調査で企業露出を比較する場合には重要な質問設計上の注意点です。

旧社名が回答に残るケースも確認された

AI検索可視化では、名前が「出たか」だけでなく、その名称が現在も有効かを確認する必要があります。

今回の言及ランキングでは「ヤマトホームコンビニエンス」が16/100回答に登場しました。

しかし、ヤマトホームコンビニエンスは2025年1月1日にアートグループの完全子会社となり、社名を「アートセッティングデリバリー株式会社」に変更しています。現在の公式案内でも、旧社名と新社名の変更が明記されています。

一方、今回の言及ランキングには「ヤマトホームコンビニエンス(現在はアートセッティングデリバリー)」という別表記も存在しました。

そのため、「ヤマトホームコンビニエンス16回答」という数字を現在の企業ランキングとしてそのまま紹介するのは適切ではありません。

次回以降は、旧社名、現社名、サービス名を区別したうえで、回答本文が「旧名称を現在の会社名として使っているのか」「過去名称として説明しているのか」まで確認する必要があります。

引越し会社がAI検索対策で次に検証すべきこと

最初に確認したいのは、参照元・本文言及・推薦を分けて追跡することです。

例えばサカイ引越センターは、2026年9月調査では会社名が62/100回答に登場しましたが、公式サイトが参照されたのは39/100回答でした。

次回は同じ質問セットを使い、

  • 公式ドメインが参照された回答数

  • 会社名が本文に登場した回答数

  • 実際の見積もり・依頼候補として提示された回答数

を別々に集計します。

次に、顧客属性・利用目的別に測ることです。

単身向けを強みにする企業であれば、単身、一人暮らし、学生、単身赴任。家族引越しを重視する場合は、子育て世帯、大家族、二拠点からの搬出など、自社のサービスと近い質問テーマを分けて追跡します。

そのテーマで、公式の料金・プラン・オプション・対応エリア・見積もりページが参照されているかを確認します。

第三に、質問文のカテゴリ条件を固定することです。

「業者」「配送先」だけでは別カテゴリへ検索が展開する場合があります。「引越し会社」「引越しサービス」というカテゴリ語を残した比較質問を用意し、検索クエリ・参照元・会社名露出がどう変わるかを再測定します。

公式ページを修正すれば会社名露出が上がると今回の調査で証明されたわけではありません。したがって、ページ整備は効果を前提とする改善策ではなく、同一条件で前後を比較する検証施策として扱う必要があります。

調査の限界と次回検証

今回の調査は2026年9月に取得されたGeminiの100回答を分析したものです。

Geminiの具体的モデル名、GeminiアプリとAPIのどちらを使用したか、正確な実行日時、詳細な検索設定、会話履歴などは確認できません。

また、言及ランキングの229名称には、引越し会社、比較サービス、運送会社、一般名称、旧社名・現社名、サービス名の違いが含まれています。「229の独立した引越し会社が登場した」という意味ではありません。

「日本通運」と「日本通運(NX)」のような表記も分かれているため、完全正規化後の企業数・サービス数は未確認です。

全100回答を統一ルールで推薦分類していないため、本文言及ランキングを推薦ランキングとしても扱っていません。

前月までの同一定義データも今回提供されていないため、「増えた」「減った」「順位が上昇した」といった月次変化は評価していません。

次月以降は質問セット、テーマ分類、AIの実行条件、企業・サービスの名称統合ルールを可能な限り固定し、参照元出現率、本文言及率、推薦出現率を分けて追跡することで、単月ランキングよりもAI検索上の変化を正確に把握しやすくなります。

調査方法・出典

Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査では、個人向け引越し業界に関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、取得された100回答、検索発火状況、Geminiの回答生成時に使用されたものとして記録された検索クエリ、参照URL・ドメイン、回答本文に登場した企業・サービス名を分析しました。

プロンプト一覧と回答データの質問番号が一致しないケースがあるため、シート横断集計では質問本文を基準に照合しています。

企業・サービスの現在の名称や公式サービスとの対応は、必要な範囲で公式Webサイトを確認しています。

出典:Queue株式会社「LLMOナビ 引越し業界(個人向け)AI検索可視化調査」(2026年9月)