AIに「使いやすい営業管理ツールは?」「商談の進捗を管理できる製品は?」「見込み客へのメール配信まで行えるツールは?」と尋ねたとき、どの製品が回答に登場し、その回答は何を情報源としているのでしょうか。

Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査では、営業管理ツール業界に関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、回答本文に登場した企業・製品・サービスと、参照元として記録されたWebページを分析しました。

結果を見ると、Zoho CRMは100回答中46回答に登場した一方、参照元としてもっとも広く使われたドメインはaspicjapan.orgで49回答でした。AI検索上の「情報源としての露出」と「製品名としての露出」は、同じランキングではありません。

調査概要

項目

内容

調査主体

Queue株式会社/LLMOナビ

調査目的

営業管理・SFA・CRM・MA関連ツールのAI検索上の可視性把握

対象

営業管理ツールや導入支援サービスを探すユーザーを想定した質問

対象AI

Gemini

調査設計上の質問数

100問

取得回答数

100回答

非指名と確認できた質問数

100問

調査年月

2026年9月

地域

JP

検索発火

92回答

事前学習

8回答

確認できない条件

Geminiの具体的モデル名、アプリ/APIの別、正確な実行日時、検索設定、会話履歴等

「非指名質問」とは、Zoho CRMやSalesforceなどの固有名をあらかじめ指定せず、「顧客情報と商談状況をまとめて確認できるツールは?」「少人数で無料体験を始められる営業管理ツールは?」など、目的や条件から候補を探す質問です。

なお、本調査はGemini回答内での可視性を調べたもので、市場シェア、導入社数、製品品質、実利用者満足度を順位付けしたものではありません。

本記事で使う「参照元・本文言及・推薦」の読み方

AI検索での露出は、少なくとも三つに分けて考える必要があります。

参照元は、Geminiの回答生成時に情報源として記録されたWebページやドメインです。

本文言及は、回答本文に企業名、製品名、ブランド名などが1回以上登場した状態です。参照元一覧だけへの登場は含めません。

推薦は、その製品やサービスが実際の利用・導入・相談候補として提示された状態です。

また、本記事の出現回答率は、100回答のうち対象が1回以上登場した回答の割合を意味します。

今回のレポートでは全100回答を同じ基準で推薦分類していないため、「本文で名前が出た製品=Geminiがおすすめした製品」とは扱いません。

調査結果の全体像|100回答中92回答で検索が発火

Queue株式会社のLLMOナビによる9月調査では、100回答中92回答で検索発火が記録されました。

検索が発火した92回答では、Geminiの回答生成時に使用されたものとして429件の検索クエリが記録されています。1回答あたり平均4.66件、中央値は5件です。

参照URLは合計1,245件、ユニークな参照ドメインは577件でした。検索発火回答だけで見ると、1回答あたり平均約13.5件の参照URLが記録されています。

一つの質問に一つの検索結果だけを使うのではなく、複数の検索クエリと多数の情報源を組み合わせる回答が中心だったことが分かります。

営業管理ツール業界のAI検索回答の特徴と押さえるべきポイント

450名称の80.7%は1回答だけ。ただしZoho CRMは46回答に登場

回答本文から抽出された企業・製品・ブランド等は450名称ありました。

そのうち363名称、80.7%は100回答のうち1回答にしか登場していません。営業管理ツール関連の回答では、非常に多くの名称がロングテールで現れています。

一方、上位には複数テーマで繰り返し登場する対象があります。

本文言及出現回答数で見ると、上位は次の通りです。

順位

名称

分類

本文言及出現回答数

1

Zoho CRM

CRM/SFA製品

46

2

Salesforce

ブランド・企業名

29

3

GENIEE SFA/CRM

SFA/CRM製品

27

4

HubSpot

ブランド

25

5タイ

kintone

業務アプリ・営業管理用途

23

5タイ

Mazrica Sales

SFA/CRM製品

23

Zoho CRMは顧客・商談管理や営業支援機能を備えたCRM/SFA、GENIEE SFA/CRMとMazrica SalesもSFA/CRMとして提供されています。kintoneも顧客・案件情報の一元管理やSFA用途に利用できます。

Salesforceについてはブランド名としての言及とSales Cloudという個別製品の言及が別に集計され、HubSpotにも「HubSpot」「HubSpot CRM」「HubSpot Sales Hub」が別名称として存在します。そのため、企業・ブランド・製品を無条件に足し合わせたランキングにはしていません。

つまり、「450名称が幅広く登場する」という分散構造と、「一部の製品・ブランドが何度も登場する」という集中構造が同時に存在します。

参照元577ドメインの74%は1回だけ

情報源にもロングテールが確認されました。

577ドメインのうち427ドメイン、74.0%は参照URL行数が1件だけです。

参照URL行数が多かった上位5ドメインは次の通りです。

順位

ドメイン

参照URL行数

1

aspicjapan.org

57

2

mazrica.com

39

3

hubspot.jp

35

4

zoho.com

34

5

it-trend.jp

32

上位5ドメインの合計は197件で、1,245参照URL行の15.8%です。

ASPICやITトレンドは、SFA・CRMの比較情報や製品情報を掲載するサイトです。ITトレンドではSFA製品の比較・資料請求、ASPICでもSFA・CRMの比較情報が提供されています。

その一方、Mazrica、HubSpot、Zohoといった製品提供側の公式サイトも上位にあります。

つまりGeminiは、第三者的な比較・情報ページだけでも、各製品の公式サイトだけでもなく、複数種類の情報源を組み合わせています。

情報源としての上位と、回答本文の製品上位は一致しない

今回の結果で特に重要なのが、参照元としての露出と製品・ブランド名の本文露出が異なる点です。

同一回答内の同一ドメインを1件として集計すると、参照元出現回答数の上位は次のようになりました。

順位

ドメイン

参照された回答数

1

aspicjapan.org

49

2

hubspot.jp

30

3

mazrica.com

29

4

it-trend.jp

28

5

zoho.com

26

一方、本文言及ではZoho CRMが46回答で最多です。

たとえばZoho CRMは46回答に名前が登場したのに対し、zoho.comが参照されたのは26回答でした。

Mazrica Salesは23回答で本文言及され、mazrica.comは29回答で参照されています。

GENIEE SFA/CRMは27回答に登場しました。公式サイトとして確認できるchikyu.netとgeniee.co.jpを回答単位でまとめると、いずれかが参照された回答は28件でした。chikyu.netは現在もGENIEE SFA/CRMの公式製品サイトとして運営されています。

公式サイトの参照数と製品本文言及数が同じでも、同じ回答で必ず両方が確認されたことを意味しません。また、同じ回答に公式サイトと製品名が存在しても、その公式ページが製品推薦の直接的な根拠になったとは断定できません。

それでも実務上は、「自社公式サイトが情報源として使われた回答数」と「自社製品名が本文に登場した回答数」を別のKPIとして追う必要があります。

質問テーマが変わると、よく参照されるサイトも変わる

100問を質問本文から10テーマに分けてみると、主要な参照元も変わりました。

例えば、料金や使いやすさなどを尋ねる「全般・比較検討」の10回答では、it-trend.jpが6/10、aspicjapan.org、bluetec.co.jp、e-sales.jpがそれぞれ5/10回答で参照されました。

顧客情報や商談管理に関する「顧客・商談データ管理」では、aspicjapan.orgが7/10回答で参照されています。

売上予測、見積、契約に関するテーマではaspicjapan.orgが6/10、zoho.comが5/10でした。

一方、メール配信やリード育成などの「マーケティング・リード育成」では、zoho.comが7/10回答で参照されています。

既存顧客への追加提案、代理店管理、インサイドセールスなどを含むテーマではaspicjapan.orgが9/10、itreview.jpが7/10でした。

この結果から、営業管理ツール全体での順位だけでは、ユーザーが何を尋ねたときに自社が情報源になるかは分かりません。

CRM、案件管理、売上予測、MA、既存顧客管理など、実際に獲得したい質問テーマごとに可視性を分けて確認する必要があります。

ただし各テーマは10問です。今回だけで「特定テーマでは必ずこのサイトが強い」と一般化せず、同じ質問セットでの継続検証が必要です。

抽象的な質問では、営業管理ツール以外へ検索が広がるケースもあった

質問文のカテゴリが十分に固定されていない場合、Geminiの検索方向が別領域へ広がる例も確認されました。

「機能を増やした場合の追加料金がわかりやすい製品を挙げてもらえる?」では、検索クエリが「モジュール式料金体系」「SaaS料金プラン」などへ広がり、SlackやAdobeなど営業管理ツール以外の情報源も含まれました。

「郊外の事務所でも訪問による初期設定を頼める相談先を教えて」では、PC設定代行や一般的なITサポートへ検索が展開しています。

「これから営業を増員する会社向けに、人数を追加しやすい契約先を提案して」では、ツールのユーザー追加ではなく、営業代行や人材派遣、営業フリーランスへ検索方向が変化しました。

さらに「契約書や提案資料を顧客ごとにまとめて管理できる製品」では文書管理システム、「既存データを試しに取り込んでから契約できるツール」ではETLやデータ連携ツールへ検索が広がっています。

これは、ブランド名を含めない「非指名性」と、対象カテゴリをAIに理解させるための明示性を分けて考える必要があることを示しています。

「人数を追加しやすい営業管理ツール」のようにカテゴリを残した質問と比較することで、意味ずれがどの程度抑えられるかを検証できます。

営業管理ツール企業がAI検索対策で次に検証すべきこと

まず優先したいのは、参照元、本文言及、推薦を別々に測ることです。

今回、zoho.comは26回答で参照された一方、Zoho CRMは46回答に登場しました。Mazrica Salesでは本文言及23回答に対し、mazrica.comは29回答で参照されています。

これらの差だけで原因は判断できませんが、「公式ページが情報源として使われること」と「製品が候補として認識されること」が別の現象である可能性は検証できます。

次回は、各製品について、

  • 公式ドメイン参照回答率

  • 製品・ブランド本文言及率

  • 実際の導入候補としての推薦出現率

を同一質問群で計測する必要があります。

次に、自社が獲得したい用途に質問を絞ることです。

SFA製品であれば商談・案件・売上予測、CRMであれば顧客情報・対応履歴、MAまで提供する製品ならメール配信・リード育成など、自社の中心機能ごとに質問群を分けます。

そのテーマで公式機能ページや料金ページ、導入支援ページが参照されているかを確認します。参照されていない情報を整理・更新した後、同じ質問条件で再測定することが検証施策になります。

また、月次調査自体の品質を上げるためには、意味ずれが確認された質問で「営業管理ツール」「CRM」「SFA」などカテゴリ語を残した比較質問を用意し、検索クエリと回答内容がどう変わるかを見ることも有効です。

ページを変更すればAI露出が上がると証明されたわけではないため、これらは改善効果を前提とした施策ではなく、仮説を確かめる検証として実施する必要があります。

調査の限界と次回検証

今回の調査は2026年9月に取得されたGeminiの100回答を分析したものです。

Geminiの具体的モデル名、GeminiアプリとAPIのどちらを使用したか、正確な実行日時、検索設定、会話履歴などは確認できません。

また、450名称には企業名、ブランド名、製品名、サービス名が混在しています。SalesforceとSalesforce Sales Cloud、HubSpotとHubSpot CRMなどを同一対象として単純に合算していないため、企業単位へ完全正規化したランキングではありません。

全100回答を「第一候補」「複数候補」「情報源・背景」などへ統一分類した推薦データもないため、本文言及ランキングを推薦ランキングとして紹介していません。

前月までの同一定義データも今回提供されていないため、「増えた」「減った」「順位が上昇した」といった月次変化も評価していません。

次月以降、質問本文、テーマ分類、AIの実行条件、表記統合ルールを可能な限り固定し、参照元出現率、本文言及率、推薦出現率を分けて追跡することで、単月ランキングよりもAI検索上の変化を正確に把握しやすくなります。

調査方法・出典

Queue株式会社が運営する「LLMOナビ」の2026年9月調査では、営業管理ツール業界に関する100個の非指名質問をGeminiに入力し、取得された100回答、検索発火状況、回答生成時に使用されたものとして記録された検索クエリ、参照URL・ドメイン、回答本文に登場した企業・製品・サービス等を分析しました。

シート間で質問番号が一致しないケースがあるため、集計時は質問本文を基準に照合しています。

企業・製品と公式サイトの関係については、必要な範囲で各社公式Webサイトを確認しました。